臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、依存症治療プログラムを行っているゴリラです。
アルコール依存症者の平均寿命は一説には50代だと言われています。
それだけアルコール依存症の末期状態は死と隣り合わせということになります。
実際の治療場面でも残念ながら亡くなってしまう方は非常に多いです。
アルコール依存症の末期はどんな状態になってしまうのか解説します。
一日中酒が止まらない状態になる
アルコール依存症が進行すると、昼も夜もなく一日中酒を飲むという状態になります。
起きたら酒を飲み、いつの間にか眠り、また起きたら酒を飲む、このような状態を「連続飲酒発作」と言います。
この状態が1、2週間続き、その間にろくに食事もとっていないために身体が衰弱していきます。
そのうち身体が酒を受け付けなくなり、酒を飲んでもすぐに吐き出してしまい、痙攣して動けなくなります。
独り暮らしで運が悪ければ、そのまま自宅で衰弱し、スマホまで這ってたどり着くことも出来ずに孤独死するケースも多いです。
家族がいる場合は、連続飲酒が始まった時点で病院につれてこられて入院することになります。
「連続飲酒発作」になってしまうと、自分の意志では酒を止めることが出来ません。飲んでいる本人も苦しくて酒を止めたいのに、飲むことをやめられないのです。
耐えがたい飲酒欲求と、身体の限界がいっぺんにやってくるのです。これは想像を絶する苦しみでしょう。「連続飲酒発作」を経験した人は「あれはもう二度と体験したくない」と言いますね。
身体の病が重度に進行
アルコールは万病のもとです。身体に悪い飲み物です。
中でも絶対悪くなるのが「肝臓」です。
アルコールは肝臓が処理しています。多量飲酒が肝臓に負担をかけるのは当然です。
多くの人は「アルコール性脂肪肝」という状態になり、もっと重症だともう二度と戻ることはない「肝硬変」「肝がん」に至ります。
それだけではありません。内臓のほとんどにダメージを与えるので、
・口腔がん
・胃がん
・食道がん
・すい臓がん
・大腸がん
様々ながんを引き起こします。結局アルコール依存症で病院にかかることのなかった多くの人は、これらの病名で亡くなってしまったものと思われます。
女性の場合は深刻な体重減少を引き起こす
女性のアルコール依存症患者さんに多くみられるのは、重篤な体重減少です。
先ほど説明した「連続飲酒発作」や、そもそも飲酒自体が食欲の減退を引き起こします。
女性のアルコール依存症の場合は、長期にわたる飲酒によって、慢性的な食欲不振に陥り、あまりご飯を食べません。
このせいで元から平均体重を下回っています。
さらにここに「連続飲酒発作」が起こると、生命を維持する量のご飯も摂取しなくなるので、極端な低体重になります。それこそ30kg代の患者さんもざらにいます。
血液検査の数値は劣悪、医学的にはいつ死んでもおかしくないほど身体検査の数値は悪化しています。
当然誰にも発見されなければ、衰弱死となります。
アルコール性認知症
アルコールは脳の萎縮を起こします。
アルコールは脳にも満遍なく行き渡ってしまうので、細胞死を引き起こし脳を萎縮させます。
つまり脳がスカスカになってしまうんですね。
これをアルコール性認知症と言います。
アルコール性の認知症になれば、物忘れが起こります。新しいことが覚えられず、5分前のことも覚えていません。
自分がどこにいて、何をしているのかもわからなくなります。入院しているのに「ホテルのチェックアウトはどこですか?」「帰りたいんだけど、道に迷ってしまって」と現実を認識出来なくなっていきます。
またアルコール性認知症の方は寝たきりになる人が多い印象があります。
転ぶ回数が多いことや、小脳へのダメージが大きいと歩行や生命維持にかかわる機能が低下するためだと思われます。
アルコール性認知症になると、最後は病院か施設でなくなることになります。
孤独死
依存症とは「孤独の病」だと言われます。
依存症が進行いけば、周りからどんどん人がいなくなっていきます。
飲酒によって朝起きられず出勤出来なくなる、仕事上でミスが増える、勤務先で飲酒を咎められる、重大な事故を起こす、などの理由で職を失ってしまいます。
家族からの「お酒をやめてください」という必死の懇願を聞き入れず、飲酒を続けた結果、多くの人は離婚します。子どもだって当然育てられるわけがありません。こうして一人になります。
しかし依存症本人もこのまま飲酒していればいいだなんて思っていません。でも酒はやめられないのです。
それでも依存症専門病院につながらなければ、孤独になり、酒をやめることが出来ずに亡くなってしまいます。
自殺
アルコール依存症の自殺率は高いです。
アルコール依存症とうつ病は併発しやすい病気で、アルコール依存症からうつ病を併発するパターンと、うつ病からアルコール依存症を併発するパターンのどちらもあります。
アルコールは脳の機能を低下させる作用を持っているので、気分の落ち込みや精神状態の悪化を引き起こす特徴があります。
それに加えて、仕事をクビになる、パートナーから離婚される、と言った出来事が起こりやすい病なので、絶望感を強める環境になりがちです。
全自殺例の32.8%からアルコールが検出されたという研究結果があり、自殺と飲酒は非常に強い関係があります。
アルコールは冷静な判断力を奪ってしまう上に、衝動性を高めてしまうので、自殺の実行性を上げてしまうのです。
これ以上の飲酒は死んでしまうとわかっていながらお酒を飲むことも、一種の自殺と言って良いかもしれません。
自殺願望がある時にアルコールは厳禁です。
飲酒運転による事故
飲酒運転は厳罰であり、昔と違ってほとんどの人は飲酒運転をしなくなりましたが、アルコール依存症者は別です。
飲酒運転がダメだとわかっていても、アルコールをやめることが出来ないのが、アルコール依存症という病気です。車を乗る予定があってもお酒をやめられないので飲酒運転率は高いです。
飲酒運転をして事故を起こし、そのまま亡くなってしまう方は一定数いらっしゃいます。
また自転車の飲酒運転も多く、転んで大けがをしたり、頭を打って重篤な状態になる方もいます。
「飲んで死ぬんだ」は本音か?
これまで解説してきたように、アルコール依存症は死に非常に近い病気です。
次お酒を飲んだら本当に死んでしまうほど状態が悪化した患者さんは大勢います。
そこで「もう飲んで死ぬから放っておいてくれ」という人がいます。
それは本音でしょうか?自分の人生を振り返った時、これからの人生を考えた時、本当にやりたいことは「酒を飲むこと」でしょうか?
アパートの一室で酒を浴びるほど飲み、1人で寂しく死んでいくことが本当に望むことでしょうか。
酒をやめたら果たすべき役割があるのではないですか?断酒後に得られるささやかな楽しみがあるのではないですか?
「もう飲んで死ぬから放っておいてくれ」と言った人でも、断酒をすると決まって「あの時死ななくて良かった」と言います。
断酒後の穏やかな生活の中でしか得られないものがあります。これは断酒しないとわからないことです。
自助グループに通っていたら、酒飲みには同じ酒飲みを救う役割があります。
死ぬかどうかを決めるのは酒をやめた後でもいいのではないでしょうか。
アルコール依存症で亡くなっていった人の経験を無駄にしないように
ここまでアルコール依存症の末期状態、様々な死の形を解説してきたのは、多くの人に知ってもらうことで、同じ道をたどらないようにしてほしいという思いからです。
アルコールの長期にわたる多量飲酒は必ずこのような結末を迎えます。
残念ながらアルコール依存症から回復することができず亡くなってしまった人達に対して私たちができることは、このことを教訓にして酒を控えることです。
アルコール依存症になってしまった人の場合は、先人の例を見て断酒への道を歩むことです。
そうでないと亡くなっていった人が報われないと思います。
また一人でも多くのアルコール依存症者が回復できるように、医療者として日々努力していこうと思います。

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